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Author:青木勇気
小説を出していたり絵本も書きたかったりします。物書きと呼ぶにはおこがましいくらいのものですが、物語を書いて生きていけたら幸せだなと思っています。

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Yahoo!ニュース個人掲載記事:「FREITAG」について

2015.03.01 23:07|雑記
“ファンダメンタル”の誘惑。FREITAGが提案する革新的な購買体験とは?

「チューリッヒなう」
ある人がこうツイートすると、特定のフォロワーたちの反応でタイムラインがざわめき立つ。チューリッヒとは、言うまでもなくスイス最大の都市のことだ。誰もが憧れる観光立国に行くこと自体は、特段変わったことではない。ただ、それが「カバンを買いにいくため」だったらどうだろうか。

彼は世界を股にかけるビジネスマンでもなければ、北欧エリアを担当するバイヤーでもない。あるバッグブランドの純粋なファンなだけだ。ブランドの名は「FREITAG」。その本店がチューリヒ、つまりは“聖地”にある。それこそが、理由なのである。

なぜ彼は、そうまでして求めるのか。世界中に熱狂的なファンを抱えるFREITAGとは、どんなブランドなのか。FREITAGを通して得られる購買体験は何が特別なのか。その理由に迫ろう。

■「FREITAG」はどのようにして生まれたのか?

「FREITAG」の創業は1993年。生みの親であるMarkus Freitag(マーカス・フライターグ)とDaniel Freitag(ダニエル・フライターグ)兄弟が、その名の由来だ。

FREITAGのバッグは、この世にふたつと同じ商品がない特徴を持つ。使い古されたトラックの幌、廃車のシートベルト、自転車の使用済みインナーチューブを再利用したメッセンジャーバッグに始まり、多彩な形状のバック、財布、ブリーフケースなど「FUNDAMENTALS(ファンダメンタル)」と呼ばれるベーシックなプロダクトラインを中心に展開している。

トラックの幌を使うアイデアは、兄弟が住んでいたアポートの窓から見える景色、カラフルな自動車が行き交う騒然とした交差点がきっかけになったという。トラックの騒音に迷惑していた二人が、そのトラックの幌から、新たな価値を持つ製品を生み出したというわけだ。使い古され役目を終えたものたちが、一つひとつ個性を持ったバッグとして生まれ変わり、世界中の人々の手に渡り、また新しい役目を果たすサイクルを構築したのである。

FREITAGの商品は、事実としてすべてが一点物であるだけでなく、パッケージを含めた洗練されたデザイン、さまざまな利用シーンを想定した機能性はもちろんのこと、コンセプトやストーリーが秀逸で、独創的なアイデアに溢れている。だから、人々は魅了されるのだ…と言ってしまえば簡単であるし、FREITAGの魅力を端的に説明する表現としてあながち間違ってはいない。

だが、FREITAGの魅力は商品単体で語り尽くせるものでは決してない、というのが当記事のテーマであり、ここから先はその「購買体験」がいかに革新的で特殊なものであるかについて説明したい。

■ 消費者はFREITAGから「体験」も買っている

まず、FREITAGを買うことは、一点物のバッグを買うことイコールではない。世界に一つしかないからレアで、レアだから買うというだけではない。FREITAGの商品を買うことによって得られる「体験ごと」買っているのだ。

FREITAGを店舗で手に取るとき、他のブランドのバッグを買う際のそれとは一線を画した体験ができる。たとえば、あなたが東京にある旗艦店を訪れたら、壁一面に設置された「V30 FREITAG Skid」と呼ばれるL字ユニット型の収納棚と、その中に収納された1000にも及ぶ珠玉のバッグの存在感に圧倒されるだろう。

購入に至るまでのプロセス、偶然の出会いへの期待感など、そこにはバッグを買いにいくというレベルから逸脱したモチベーションがあるのだ。これが、FREITAGはただバッグを買うだけではないと言った理由である。そういう意味では、FREITAGを買って使うという行為は、バッグを持つというより、お気に入りのアイテムを身につける、自分のアイデンティティを反映させたものを持ち歩くといった方が正確かもしれない。

また、FREITAGの公式サイトにはオンラインショップ機能があり、ここにおいても一味違う買い方ができる。具体的には、80種類を超えるアイテムそれぞれに多数の在庫があり、一つひとつ撮影された画像を回転させて全体像を確認したり、フラップをめくった際の柄を確認することまでできる。

海外から購入することになるため多少コストはかかるが、身近なところに取り扱い店のないファンにとっては、現物を手に取る感覚に近い形で購入することができるため、非常に価値あるサイトとなっている。

■ ブランディングとマーケティング戦略こそが、FREITAGの強み

オンラインショップといえば、近年EC事業者の成長戦略として、O2O、オムニチャネル、コンテンツマーケティングなどというキーワードが散見されるようになった。その背景には、ECで完結してしまうため店舗に来てもらいにくくなった、技術革新やライフスタイルの多様化に合わせた購買チャネルの拡大が必要になった、ショップが増えすぎてほとんどの店舗が同じやり方では売上が伸びなくなったなど、さまざまな理由がある。

しかし、FREITAGはこのようなバズワードが出てくる前から、しっかりとしたブランディングとマーケティング戦略でファンを囲い込んでいる。この点にも注目したい。

まず、消費者の動きとして、楽天で欲しい商品の在庫を確認したり、価格.comで最安値を割り出したり口コミを見たうえでお店で現物を確認し、ネットで買うケースが増えているが、こうなると、在庫や人件費をかかえるリアル店舗が苦しい状況になってしまう。ただ、FREITAGはすべてが一点物という商品の特性上、消費されるだけで売上があがらないという憂き目に遭うことはないし、価格競争に巻き込まれることもない。

また、先述の通りFREITAGは、そもそもがリアルでもオンラインでも特殊な購買体験ができる商材のため、O2O(Online to Offline)を地で行っているところがある。たとえば、新作が出た際には、店舗に行けばもちろんその魅力を十二分に体感できるが、オンラインでもショップとしてだけではなく、商品のコンセプトや紹介動画などが充実していて「メディア」としても機能しているため、実際に手にとってみたいと思わせることができる。

コンテンツマーケティングという観点でも、さまざまなコンテンツによってブランドの魅力を伝え、また頻繁に商品在庫を更新することで、ユーザーを月に何度も訪問させることができる。多くのEC事業者を悩ませる競合優位性、オリジナリティといったポイントを見事に押さえている。実のところ、老舗のハイブランドでさえもここまではできていない。

一見すると、希少性とデザイン性によって商品力を保っているように思えるが、むしろブランディングとマーケティング戦略にこそFREITAGの強みがあるのだ。

■ ファンを魅了するキャンペーンやイベントも

FREITAGのマーケティングがいかに秀逸であるかイメージしやすいように、具体例をいくつか紹介しよう。まず、FREITAG-Store Tokyo・Shibuyaで実施中の来店促進キャンペーン「THE TEAM OFFER FOR INDIVIDUALISTS」。スポーツチームのメンバーで来店し写真撮影すると、6個を5個分の値段で購入できるというものだ。

対象商品は、スポーツバックタイプのF45 LOIS、F46 CLARKで価格はそれぞれ30,348円(税込)と34,020円(税込)だが、ただお得なことを訴求するだけでなく、ユーモアに富んだムービーなどを通して、商品の魅力、使い方、利用シーンを伝え、啓蒙している。

また、オープニングパーティーや季節のイベントなど、ユーザーと交流を欠かさないのも特筆すべき点だろう。関係者やファンはもちろんのこと、たまたま通りかかった人にも、おいしい食べ物や飲み物を振る舞い、ノベルティをプレゼントしてくれる。そしてそれは、ただ気前がいいということではなく、何らかの形でFREITAGらしさを表現し、それを体感してもらうことが前提にある。ヒト・モノ・コトが一体となった空間を提供することが、FREITAG流なのである。

その他、コラボレーション企画によりイベントが行われるケースもある。たとえば、JR東日本ステーションリテイリングが運営する雑貨店「rezept design&store」とタイアップし、廃棄前のJR車両の連結部分の幌とFREITAGの幌を使ったトートバッグ「F52 MIAMI VICE」をユーザー自ら制作できるイベントを行い、余った幌でオリジナルポーチを作りrezept design&store限定で販売されるといった好例があり、FREITAGのコアコンセプトを損なうことなく、新しい価値やプロダクトが生み出されることも非常に魅力的と言える。

■ 直営店でFREITAGの魅力を伝える意義

このように、FREITAGは独自のやり方でブランディングを行い、ユーザーを楽しませ、ファンを大切にしているわけだが、実際に店舗を運営するスタッフはどのようなことを心がけているのだろうか。2011年10月のオープン以来FREITAG-Store Tokyoのマネージャーを務める内藤さんにお話を伺った。 

FREITAG-Store Tokyoでは、内藤さんが笑顔でお客さんを迎え入れ、おもむろにこだわりのエスプレッソを淹れてくれる。あたかもバーカウンターのようにリラックスしたムードの中、小物類が並べられたショーケースを挟んでインタビューは始まった。まずは、直営店スタッフとしての役割について。

「FREITAGとは何なのかをお客様に伝えることが僕らの仕事です。FREITAGの魅力って何なのかといえば、リサイクル、エコありきで20数年やってきましたが、それを前面に押し出すことなく表現すること、たとえば“individual freeway bag”、“more than a bag”といったコンセプトもそうですが、つまりは“FREITAGにしかない”もの。それをいかにして伝えるかはスタッフにかかっています。FREITAGの変わらない価値観はありますが、マニュアルがあるわけでもないので、それぞれが体現者として語る必要があると思います。」

内藤さんはゆったりと語りながらも、取材の合間にパーツのリペアを希望するお客さんが来店すると、すぐにスイッチを切り替え丁寧にサービス内容を説明していた。このように、既存ユーザーは商品を探しに来るだけでなく、修理に出すために来店することもある。一方、銀座というエリアの特性上富裕層が多いため、FREITAGを全然知らない人がふらっと来て、色や形がかわいいからと値段なども気にせず買っていくことも増えているという。そのような場合は、後付けでFREITAGとは何かを説明することになるが、まさにスタッフが伝道師として活躍する瞬間だと言える。 

次に、アジア初の旗艦店が東京であるように、どうしても取り扱い店が特定のエリアに集中しがちだが、販売代理店などの展開はどのように考えているのか聞いてみた。

「各都道府県に1店舗ずつは展開したいですね。ただ、FREITAGは15年以上前から“ブームに左右されない店”をキーワードにして店探しをしてきました。ブームに乗っかって売上を立てたいと希望するお店もありましたが、それよりもまずコンセプトや価値観を共有できることを重んじているので、これからもそれは変わらずにいきたいです。」

現在も全国にFREITAGの販売代理店があるが、希望すればどこでも取り扱えるわけではなく、FREITAGの魅力を理解・共感し、それを思い思いのやり方で伝えられるお店でなくてはならない。事業である限り利益性は外せないが、常に魅力的な新しいプロダクトを生み出しつつも「変わらないもの」を大切にするからこそ、ブレることなくファン心をつかむことができるのだろう。

ちなみに、内藤さんのFREITAGとの出会いは1999年で、初めて持ったのは今や廃盤となってしまったバックパック「F33 BONANZA」だという。一番好きなバッグは、すべてのはじまりでもある「F13 TOP CAT」とのことで、取材後少し店内で物色していたら、来店したお客さんに声をかけ、楽しげにTOP CATの使い方を説明する姿を見ることができた。

商品を探す高揚感とともに演出される、落ち着いた雰囲気のサロン空間のような店舗。スタッフはもとより、生みの親であるフライターグ兄弟も、創業から20年以上経ちここまで大きく成長したにもかかわらず、決して傲慢になることなく、自然体でファンとの交流を楽しみ、自らブランドの魅力を体現している。彼らもまた、FREITAGが愛される大きな理由のひとつなのである。

■ それでも僕らは、ファンダメンタルに誘惑される

さて、これでもかというくらいFREITAGの魅力について書いてきた。すでにお気づきだと思うが、筆者自身FREITAGをこよなく愛するファンの一人である。だから、多少バイアスがかかってしまっているかもしれない。だが、決して誇張しているつもりはないし、冒頭で紹介したコアなファンのように、FREITAGを愛するがゆえにチューリッヒまで行く、というのもまったくもって不思議な話ではない。

これは国内に限ったことではなく、実際アジア諸国のファンも観光を兼ねて日本の旗艦店に訪れている。海を渡る勢いではないまでも、全国に点在する個性的な取り扱い店を回り、店主のこだわりを聞くことや、土地土地のファンと交流する楽しみもある。FREITAGが紡いできたストーリーが、バッグを通して人と人を結びつける、こんなブランドはなかなかない。

「たかがカバンに。しかも高いし」と思う方もいるかもしれない。もちろん、それはある価値観の中ではまったくもって正しい。先述した通り、必要に迫られて買うものではないから。それでも僕らは、FREITAGが提案する“ファンダメンタル”に誘惑される。そこにしかないものを買いにいくために。

「Yahoo!ニュース 個人」に寄稿した記事を転載しています
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